2019.2.14-2.18 10:00-21:00
入場無料
3331 Arts Chiyoda (東京)
B105マルチスペース
2019.2.22-3.7 15:00-23:00
入場無料
y gion (京都)
4Fギャラリースペース

このプロジェクトは、日本を代表するお笑いトリオの代名詞的ギャグである、通称「どうぞどうぞ」がはらむおかしみを、理論化とそれに基づく実装の揺り戻しで、「制作につながる知恵」にするものです。

企画・制作:佐々木 遊太
支援:平成30年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
Support: Project to Support Emerging Media Arts Creators, 2018
本プロジェクトで制作した実装14点を集めたテーマ展示を、東京と京都の2箇所、上記日程でさせて頂きます。「どうぞどうぞ」をしらべた過程を、映像、デバイス、音響からよくわからないものまで、様々なメディアを通して体感して頂けます。だいたい私もおります。是非お越しください。 「どうぞどうぞ」をしらべる 外神田
会期:2019年2月14日(木)~2月18日(日)
時間:10:00-21:00
場所:3331 Arts Chiyoda B105マルチスペース
開催まで
「どうぞどうぞ」をしらべる 祇園
会期:2019年2月22日(金)~3月7日(金)
時間:15:00-23:00
場所:y gion 4Fギャラリースペース
開催まで
はじめに
ある日、知りたいことが見つかった。それは「笑い」に関する事柄で、もとよりいつか学びを得たいと考えてきたが、いよいよ知りたい気持ちが大きくなった。そこで、まずは関連する主要な文献や論文など、先人の言葉たちにあたった。ピンとこなかった。それらは確かに鋭い洞察ではあったが、新たな制作に導いてくれるものではなかった。そこで、以前デザインの先生に繰り返し言われたことを思い出した。曰く、「手で考えなさい」。ぎこちなく、映像をつくり始めた。すると、すぐに自分なりの知恵を構築することができた。しかし、それは映像そのものをより良くしそうではあったが、知恵を深めるには至らなかった。この段階で培った知恵は、他のメディアにも転用できそうだった。今度は、デバイスによる実装を始めた。制作を進めていくと、その都度新たな発見があり、知恵へのフィードバックが活発になった。気づけば私は、調べるために作っていた。
このプロジェクトについて
日本を代表するお笑いトリオの代名詞的ギャグである、通称「どうぞどうぞ」がはらむおかしみを、理論化とそれに基づく実装の揺り戻しで、「制作につながる知恵」にするプロジェクトです。また、実装をまとめた個展を実施し、フィードバックを得ることで、より知恵を深めます。
私は、街頭紙芝居の活動やコミュニケーションを生む映像装置の開発など、多様な背景を混在させるメディアをテーマに制作してきました。その点において「どうぞどうぞ」は、「同調圧力」や「はしご外し」といった、人間が生きて行く上で避けては通れないおかしみに立脚した関係性を描き、人々を笑顔にしています。これは、鑑賞する側にも、場合によっては参加する側にも特定のコンテクストを要求せず、私のテーマにとってリファレンスすべき表現であると考えてきました。リーダーの号令で、スタジオを超え、お茶の間まで支配域を広げる「お約束空間」の解明を試みます。
支援:平成30年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
Support: Project to Support Emerging Media Arts Creators, 2018
佐々木 遊太
1982年生まれ。大学時代、終電を逃して宿泊したサウナにて、ホスト、ホームレス、ヤクザ、子ども、外国人など、様々な人が休憩室のテレビを見て共に笑っている状況に遭遇し、ピントが明確になる。以降、多様な背景を混在させる状況を生むメディアを目指すようになる。大学卒業後、ユニット「ささき製作所」をスタート。街頭紙芝居師(東京都公認ヘブンアーティスト)、日本科学未来館展示スタッフを経て、現在は東京藝術大学社会連携センター特任研究員、および東京大学空間情報科学研究センター小林博樹研究室学術支援職員を兼務しながら、ささき製作所にて自主制作を行なっている。作品『鈴木よしはる』で、WIRED「CREATIVE HACK AWARD 2016」グランプリ受賞。『即席紙芝居』『ズームイン顔』で、第15回第19回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品選出。本プロジェクトで、平成30年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業に採択される。
 全体構造 v1
V-1、およびV-2によって生じた問いを明らかにするため、手帳に全体の構造を書き出した。「どうぞどうぞ」の15秒間に推移する動作、状況、ニュアンス、気持ちの4つを、タイムラインに配置した。すると、ニュアンスに関して演出可能であることがわかった。また、書き出した構造は、制作によるフィードバックを経て改良可能である手応えを得ため、これを軸として制作することとした。
 構造アニメーション
T-1でピックアップしたニュアンスを演出の指針として、黒い円のみを用いてアニメーション化した。具体的には、真剣→イージングでぐいっと動く、気が進まない・しぶしぶ→他より時間をかけて等速直線運動、迅速→モーションブラーで素早さを強調、狼狽→震え、に置き換えた。このアニメーションが何を表現しているか、複数の同僚に尋ねたところ、「どうぞどうぞ」であると即答する者もいた。
 全体構造 v2
映像、デバイスにて、T-2に基づいて様々な試行をするなか、演出上の判断が早くなっていることに気付いた。そのため、全体構造のアップデートを試みた。書き起こすと、すなわち、同調圧力やはしご外しといった、3人の関係性が場を駆動していることに気付いた。つまり、「同調圧力からはしご外しへの流れ」が、「どうぞどうぞ」を形づくる重要なポイントであることが明確になった。これにより、以降の実装は、それの体験者がいかにして同調圧力とはしご外しを感じられるか、という点に絞られた。
 全体構造 v3
同調圧力とはしご外しの、音による実装を経て、状況の変化がそれらを生んでいることに気が付いた。状況が変わることで感情に変化が起き、変化した感情にもとづいて行動が起きる。その行動が、さらに状況を変えることで、場のコミュニケーションが駆動する。そこで、このサイクルにのっとり、3人が唯一シェアしている要素である状況を起点に、全てを書き起こした。さらに、駆動プロセスで3人に働く力の作用も記述した。これは、矢印の方向に働く、名前の無い純粋な「力」として記述でき、状況に応じて同調圧力などの呼び方が生まれる。
 スペースシャトルの発射
「異なるシチュエーションの音と映像をモンタージュする」というふとした着想が、本プロジェクトの始まりである。宇宙開発の一環であるスペースシャトルの発射と、日本人なら誰もが知っている茶の間のお約束を結ぶことで、スケールのギャップを生み、笑える映像ができるのではないかと考え、急ぎ編集した。結果として、書き出しを終えた瞬間ひとりで爆笑してしまったため、さらなる改良、応用の手応えを感じることができた。
 4回転ジャンプ
ロケットの発射を制作した後、「どうぞどうぞ」の仕組みを抽象化し、新たに肉付けしたものである。助走からのジャンプというシーケンスを「おれがやるよ」に、ジャンプの中止を「どうぞどうぞ」になぞらえた。結果的には、笑うことができなかった。これにより、「なぜロケットはおもしろく、こちらはそれほどおもしろくないのか」という問いが生まれ、「どうぞどうぞ」を抽象化し、全体の構造を書き出すきっかけとなった。
 組み合わさったモデルと動き
全体構造T-4、及びそれに基づく関数を書き出して、最初に取り組んだ映像である。映像といっても、完パケされたものでなく、気になるモチーフを複数モデリングし、それらに自分で収録したモーションキャプチャデータを、関数に沿ってランダムに与えていくことで、「どうぞどうぞ」をリアルタイムに生成し続けるものである。モデルが機械のように動くため、逆に「個性とは何か」を考える契機となった。
 LEDモジュール
T-2を書き出した段階で、その構造をアクチュエートすることが可能なのではと考えた。そこで、素早い実装が可能なLEDを用いて、構造を実世界に落とすこととした。特に、肥後氏と寺門氏はオンオフ、上島氏は連続的な変化を必要とするため、PWMによる調光を行った。結果として、ダチョウ倶楽部が、現実の空間に小さなスケールで実体をもって現れたような感覚があり、興奮を覚えた。
 AC-DCコンバータ
D-1に引き続き、より大きなものをアクチュエートするため、投光器を用いた電源制御装置を制作した。音と光を完全に同期させるため、音源再生モジュールを積んだArduinoで3つのコンセントの電力を制御した。上島氏を受け持つ電源では、LEDとCdSを組み合わせた自作のフォトカプラで抵抗値を制御した。これにより、「特定の空間に広義のアプリケーションとしてのダチョウ倶楽部をインストールする」という新たなコンセプトを見つけた。
 ドアの開閉
光とともに、動きのアクチュエートも実装したいと考えた。そこで、「おれがやるよ」を「行く」に置き換えた視覚的なコードとしてドアを取り上げ、3台のサーボモーターで実装した。制御プログラムを書くなかで、肥後氏の役割を受け持つドアと、寺門氏のドアがもみ合い、上島氏ドアの動きに合わせて静止させるべきであることに気づいた。このディテールへの気付きは、全体構造T-3のアップデートに直結した。
 高速回転ボックス
本件以前より、加工食品や位牌など、魂を感じるものを高速回転させたい希望があり、それを一連の試行に合流させて、高速回転ボックスとして実装した。具体的には、DCモータ3台を制御するモジュールを自作し、シャフトの先端にむき甘栗とキャベツ太郎を設置して高速回転させた。「どうぞどうぞ」の面白さに、自分の嗜好を加えることができた。
 加工食品が飛ぶ
D-4において、キャベツ太郎を高速回転させたところ、モーターの負荷に耐えきれずに飛び散る現象が起こった。従来より「理由はわからないが確実におもしろい」という事柄については大切に進める必要性を感じており、これが当てはまったため、別枠として実装することとした。
 回転体投影モジュール
通勤中、映像を回転体にプロジェクションすることが可能なのではと考え、その足で秋葉原に向かい、D-4をもとに実装した。先端に取り付ける針金の形によって、2重にプロジェクションされてしまうことを防ぐため、スクリーン面となる外側を白く、内側を黒く塗装することで、1層のプロジェクションを可能にした。また、回転中は美しい像が浮かび上がるのに対し、静止すると無骨な針金になるギャップを面白く感じた。
 牛を吸うUFO
T-4をもとにした実装のふたつ目として、噴霧器のアクチュエートを試みたが、ノズルがかたく断念した。その試行において、ノズルを引っ張る構造を制作したことから、それを応用できるモチーフとしてUFOが牛を吸うアクティビティに目をつけた。3Dプリントした牛を細いテグスで吊り、プーリーで上下運動させると同時に、UFOから直下に向けてLEDの光を放つことで実現した。苦肉の策として、幼少期から魅力を感じていた事象を扱ったが、結果として理想的なアブダクションを実現できたことを嬉しく思った。
 竜ちゃん体験
T-3をもとに、同調圧力の表現に絞って音系のアプリケーションを制作した。肥後氏と寺門氏の役割を担う声を2台の指向性スピーカーに振り分け、体験者の左右から「おれがやるよ」の同調圧力をかけるものである。「圧力をかける」の演出として、補助的にじっくり顔によっていくカメラ映像を出した。体験者の動きを動体検知でチェックしていて、一定の閾値を超えるとどうぞどうぞが発現するしくみとなっている。
 どうぞどうぞ空間
部屋の8箇所に設置したXBee搭載型音源再生モジュールに向け、サウンドセンサ入りマイクと照明制御装置を接続したコーディネーター機から信号を送るシステム。暗い部屋で、あちこちから「おれがやるよ」の言い合いが響き渡るなか、発光するマイクに向かって体験者が発話をすると、音源が一斉に「どうぞどうぞ」に切り替わり、照明が点灯して明るくなる。空間全体でのはしご外しを試みた。
 どうぞどうぞ無双(パソコン)
T-4より導き出した関数を、人やもの、衣服、乗り物、建物、家具、植物から動物に到るまで、万物に適用する「どうぞどうぞ無双」というコンセプトを考案した。そのプロトタイプとして、本プロジェクトで活用している、Adobe CC、Xcode、Blender、Sculptris、Arduino、Audacity、Unityといった、様々なアプリケーションのアクティビティに関数をインストールすることを考えた。また、メモ帳やGoogle Chromeなど、広く一般的に利用されているものにも適用することで、コンテクストのハイ・ローを問わない表現を目指す。
「どうぞどうぞ」をしらべる
本プロジェクトで行った実装を空間に落とし込み、シェアしたいと思い立った。助成に応募したところ運良く採択されたため、東京と京都の2箇所でテーマ展示を実施することとなった。ここまで、扁額を除くあらゆる営みをひとりで行ってきたため、こもった熱の気化には勇気が必要であったが、またとない機会に得られた知見を共有できるよう、努力した次第である。
「どうぞどうぞ」の練習
個展の開催にあたり、来場者との対話プログラムを制作した。まず、肥後氏、寺門氏の「どうぞどうぞ」ムーブを3Dデータ化し、空間における関節の座標を取得した。それを来場者の腕の動きとリアルタイムに照らし合わせることで、「どうぞどうぞ」の動きを採点し、美しい「どうぞどうぞ」を身につけるものである。観客が物語に登場する「即席紙芝居」の延長として、コンピューターと協働し、その面白さを引き出す役割として、自分を位置付けた。
 こい神楽
脱線のひとつめとなる。子どもの日に、元同僚とそのお子さんたちに会うこととなり、こいのぼりを作ろうと考えて制作した。祝儀袋の「寿」を切り抜き、補修剤で厚みを増したものをボックスに接着し、針金の先端に、こいのぼりに見立てた「のし」をくくりつけ、回転させる。「風を待つのではなく、自分から起こす子に育ちますように」との願いを込めたが、結果として「慶事×高速回転」という、染之助染太郎然とした太神楽へと合流することとなった。
 回転体投影マシン
D-6の回転体投影を、彫刻・インスタレーション作家の同僚、阪上万里英氏に話したところ、先端部分を制作してくれた。投影面を大きく、鏡面にしたところ、床にも反射して美しい像を描いた。また、DLPプロジェクターの性質上、モーターの回転によって光をRGBにデコードすることがわかった。
 扁額
個展の開催に向けて会場を下見したところ、何かが足りない印象を受けた。その場でしばらく考えた結果、それが扁額であることに気付いた。そこで、ロゴを中心として見取り図のモチーフを額縁にあしらい、V-3でモデリングしたマーモセットを散りばめた扁額を設計した。中央部分と額縁は切削したケヤキ、マーモセット部分は3Dプリントした樹脂となる。元来、扁額は「お墨付き」の役割も担っていたことから、それを自分で与える意図で制作した。
加工協力:入沢拓
空間スクリーン
EX-2の試行を繰り返す内に、特殊な回転体と1台のプロジェクターを組み合わせて、これまでにない視覚効果を生み出す理論を考案した。そこで、坂上氏に加え、同僚の立体造形作家である工藤湖太郎氏にも参加頂き、改良を重ねた。結果として、空間をキャンバスにするような装置ができたため、研究費を取得し、その精度を高めている。